ASEAN(”東南アジア諸国連合”)は、経済成長が著しい地域として、世界中の企業から注目を集めています。
特に、日本の中小企業にとっては新たな市場を開拓する絶好の機会を提供しており、その多様な市場環境、豊富な労働力、戦略的な地理的位置が魅力です。
この記事では、ASEAN市場の魅力や参入の意義、具体的なステップ、成功事例、リスク対策について詳しく解説します。
- 中小企業にとってのASEAN市場の魅力とは?
- 中小企業がASEAN進出で得られるメリット3つ
- ASEAN進出を成功するための4つのステップ
- 日本企業がASEANで成功を掴んだ成功事例4つ
- ASEAN市場進出|知っておくべき5つのリスクと解決策
この記事が、ASEAN参入を目指す中小企業の方々の道しるべとなることを願っています。
0. はじめに
ASEAN(”東南アジア諸国連合”)は、東南アジアの10ヶ国(*)から成ります。
(*) インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア、シンガポール、ミャンマー、カンボジア、ラオス、ブルネイ。
ASEAN地域の総人口は約6億7千万人を超え、多くの国が経済成長を続けています。
出典: wikipedia
1. 中小企業にとってのASEAN市場の魅力とは?
ASEAN地域が、日本の中小企業にとって魅力的である理由を詳しく見ていきましょう。
経済成長率の高さ
日本とは大きく異なり、ASEANの多くの国では、「年平均4〜6%」の高い経済成長率を維持しています。
特にベトナムやフィリピンなどは成長著しく、消費市場の拡大も続いています。
また、人口の中央値が30歳以下という若い労働力が、継続的な経済発展を支えています。
さらに、自由貿易協定 (FTA)* の活用により、ASEAN地域での関税優遇が期待できる点も進出の後押しとなります。
(*) 自由貿易協定(FTA)とは?
自由貿易協定とは、特定の国や地域間で関税やその他の貿易制限を削減・撤廃することを目的とした国際協定です。
締結国間で自由な貿易を実現し、貿易や投資の拡大を目指すことを目的としています。
多様な市場環境
ASEAN諸国は、国によって文化、経済環境、規模が大きく異なります。
そのため、リソースが限られる中小企業は、自社の製品やサービスの強みを活かせる最適な市場を選ぶことができます。
例えば、主な進出先である3ヶ国の特徴は以下の通りです。
- インドネシア
2億8千万人以上の人口を持つ巨大市場。 - シンガポール
ASEANの金融・物流ハブとして戦略的拠点。 - ベトナム
製造業の新たな拠点として注目。
地理的優位性(物流拠点として理想的)
ASEANはアジアの中心に位置し、欧米、中東、オセアニアへの物流拠点としても理想的です。
日本からの輸送時間も比較的短く、物流コストの面でも大きなメリットがあります。
2. 中小企業がASEAN進出で得られるメリット3つ
ASEAN市場への進出は、日本国内の中小企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?
この章では、その3つのメリットを分かりやすく説明していきます。
メリット①:コスト競争力の強化
ASEAN地域では、労働力コストが日本と比べて大幅に低いと言えます。
そのため、製造拠点を置くことでコスト削減が期待できます。
さらに、現地で部品調達も可能なケースが多いこともあって、製造コストの圧縮が見込めます。
メリット②:新たな収益源の確保
少子高齢化が進む中で、日本国内市場は縮小傾向にあります。
一方で、成長市場であるASEAN市場に製品やサービスを提供することで、新たな収益源の確保が見込めます。
メリット③:ブランド価値の向上
海外進出に成功すれば、「グローバル企業」としてのイメージを高めることができます。
特にASEAN市場で成功を収めることで、国内外での信頼性や評価の向上に繋がります。
また、その結果として、グローバル的に活躍したいという優秀な人材も獲得しやすくなります。
3. ASEAN進出を成功するための4つのステップ
ASEAN市場への参入は、計画的に進めることが成功の鍵となります。
この章では、参入までの4つステップを詳しく解説します。
- 【ステップ1】 市場調査
- 【ステップ2】ビジネスモデルの策定
- 【ステップ3】ローカライゼーション
- 【ステップ4】法的・行政手続き
それぞれ順にみていきましょう。
【ステップ1】・・市場調査
市場調査は、ASEAN進出の基盤となる重要なステップです。
各国の経済状況、競合企業の動向、消費者のニーズなどを徹底的に分析する必要があります。
例えば、食品業界であれば、現地での人気食材や食文化、消費者が求める品質や価格帯について調査することが肝要です。
⚫︎ ターゲット市場の選定と調査
・ASEAN各国の中でも、自社の製品やサービスに最も適した国を選びます。
・経済成長率、人口構成、購買力などを考慮しましょう。
⚫︎ 現地消費者の嗜好調査
現地での消費行動や文化的背景を理解し、製品開発に活かします。
⚫︎ 競合分析
市場で競争している企業の強み・弱みを把握し、差別化戦略を策定します。
【ステップ2】・・ビジネスモデルの策定
進出先でのビジネスモデルは、成功を左右する重要な要素です。
その際に特に重要となるのが、「現地法人の設立」と「販売戦略」です。
現地法人(現地の会社)の設立
現地に新会社を設立する場合、運営方針を決める必要があります。
基本的には2つの選択肢があり、「自社で直接運営するか」、「現地のパートナーと提携するか」です。
- ①直接運営
自社の管理下で全てを運営できるため、ブランドコントロールがしやすい。
XXX - ②パートナーシップ
現地企業と提携することで、法規制や文化的な壁を乗り越えやすくなります。
販売戦略
ビジネスモデルの策定において、最適な販売戦略を決めることが成功に欠かせません。
現地の流通チャネルを活用したり、ASEAN諸国で台頭するeコマースを活用しオンライン販売を目指すが一般的です。
- 小売チャネル
スーパーマーケットや専門店への納品。
XXX - オンライン販売
現地で人気のプラットフォーム(LazadaやShopeeなど)での販売。
【ステップ3】・・ローカライゼーション
ローカライゼーションも、ASEAN市場での成功の鍵となります。
現地の言語、文化、消費者ニーズに合わせた製品やサービスを提供することで、競争優位性を目指しましょう。
- 製品のカスタマイズ
・現地の文化や嗜好に合わせたデザインや機能を追加。
・(例) 食品の場合、スパイシーな味付けや現地特有の食材を使用。XXX
XXX - ブランドメッセージの現地化
現地語を使用した広告やSNSマーケティングを展開し、顧客との距離を縮めるためのアプローチ。
XXX - パッケージデザイン
ASEAN各国で人気のデザイン要素(色彩、フォント、サイズなど)を取り入れたパッケージを採用。
【ステップ4】・・法的・行政手続き
法規制や行政手続きを正確に理解することは、事業運営を円滑に進めるために不可欠です。
- 会社設立手続き
現地法人設立には、現地の法規制や手続きに精通した専門家の協力が必要です。 - 知的財産権の保護
商標や特許を現地で登録し、不正コピーから製品を守ります。 - 税制の確認
各国の税制や輸出入関税に関する知識を持つことが重要です。
4. 日本企業がASEANで成功を掴んだ成功事例4つ
ASEAN進出の成功に繋がるヒントを掴むためにも、成功事例から自社に活かせるヒントを掴む意識が大切です。
事例①:食品メーカーA社(ベトナム進出)
食品メーカーであるA社は、ベトナム市場の若年層をターゲットに、現地のトレンドを取り入れた商品開発を行いました。
以下のようなアプローチを効果的に組み合わせることで、わずか2年で売上の倍増に成功しました。
A社: 具体的なアプローチの例
- ベトナム特有の味覚に合わせた新商品の投入。
- ローカルで人気のSNSプラットフォームを活用したキャンペーンの実施。
- 現地インフルエンサーとのコラボレーションにより商品の認知度を向上。
事例②:機械部品メーカーB社(インドネシア進出)
機械部品メーカーであるB社は、インドネシアの現地企業と合弁事業を立ち上げて、ASEANに進出しました。
以下のような効果的なアプローチにより、インドネシア国内での市場シェアを3年間で25%向上させることに成功しました。
B社: 具体的なアプローチの例
- 現地企業との合弁事業を選択することで、コスト削減と安定供給を実現。
- 現地の生産ネットワークを利用することで、短期間で製品ラインを拡充。
- 日本式の厳格な品質管理基準を適用し、現地市場での信頼を獲得。
事例③:教育サービスC社(タイ進出)
教育サービス会社であるC社は、タイ国内のICT普及率に着目し、「スマートフォン向けの教育アプリ」を開発しました。
以下のようなアプローチを効果的に組み合わせることで、リリース後わずか1年でユーザー数が15万人を突破。安定した収益基盤を確立しました。
C社: 具体的なアプローチの例
- 現地語対応のコンテンツや無料体験プランを提供し、フリーミアムモデルを採用。
- サービスを充実させた有料会員プランの導入
- 特に、中間所得層をターゲットにしたマーケティング戦略に注力
事例④:アパレルメーカーD社(フィリピン進出)
アパレルメーカーであるD社は、フィリピン市場の文化的背景を深く理解し、現地の伝統的なデザインの衣料品を展開しました。
以下のような効果的なアプローチにより、フィリピン国内外の顧客からの支持を集め、売上の25%が海外輸出を占めるまでに事業拡大しました。
D社: 具体的なアプローチの例
- フィリピン市場の文化的背景を深く理解し、現地職人との協業。
- 現地の伝統的な刺繍技術を取り入れたデザインの衣料品を開発。
- 地域社会にも大きく貢献し、CSR(企業の社会的責任)活動としても高評価。
5. ASEAN市場進出|知っておくべき5つのリスクと解決策
ASEAN市場に参入する際には、複数のリスクが存在します。
以下のような主に5つのリスクを事前に把握し、適切に対策を講じることが成功の鍵です。
- 法規制の変更
- 文化的な違い
- 為替リスク
- 物流の課題
- 競争の激化
それぞれ順に解説します。
リスク1:法規制の変更
ASEAN各国では、法規制が頻繁に変更されることがあります。
例えば、輸入品に対する関税の引き上げや、労働法の改正が事業に影響を及ぼす可能性があります。
【法規制変更リスクへの対策】
- 現地の法律事務所やコンサルタントと定期的に連携し、法規制の動向を常に把握。
- 予測困難な規制変更に備え、柔軟な事業運営体制を構築。
リスク2:文化的な違い
ASEAN市場では、文化的な違いによるトラブルが生じることがあります。
例えば、ビジネスマナーや消費者の購買行動が日本とは大きく異なる場合があります。
【文化的な違いへの対策】
- 現地スタッフを積極的に採用し、文化的なギャップを埋める。
- 定期的な研修を通じて、社員全体が現地文化を理解。
リスク3:為替リスク
ASEAN地域の通貨は、経済情勢や政治的要因により大きく変動することがあります。
これにより、利益が減少するリスクがあります。
【為替リスクへの対策】
- 為替予約や通貨スワップなどの金融ツールを活用。
- 日本円と現地通貨の比率を調整し、リスクを分散。
リスク4:物流の課題
物流インフラが未整備な地域では、日本の物流システムの常識は通用しません。
配送の遅延やコストの増加が事業に影響を及ぼすことがあります。
【物流面での課題への対策】
- 現地で信頼性の高い物流業者を選定。
- 必要に応じて、自社物流ネットワークを構築。
リスク5:競争の激化
ASEAN市場は、他国からの参入企業も多いため、競争が激化しています。
価格競争や市場シェア争いが避けられません。
【競合への対策】
- 差別化された製品やサービスを提供し、競争優位性を確保。
- 顧客との関係を深めるため、アフターサービスやロイヤリティプログラムを導入。
【参考】ASEAN進出時のチェックリスト
ASEAN進出時に最低限チェックすべき項目は、以下の通りです。
- ☑ 市場調査完了
- ☑ 現地法人設立またはパートナー選定
- ☑ 製品のローカライゼーション
- ☑ 法的手続き完了
- ☑ マーケティング計画策定
- ☑ リスク対策の準備
これらをきっちり準備することで成功に向けて着実に進めていきましょう。
6. まとめ:ASEAN市場での成功を目指して
ASEAN市場は、日本の中小企業にとって大きな可能性を秘めています。
しかし、成功するためには入念な準備と計画が不可欠です。
ここまで解説してきた市場調査、ローカライゼーション、法的手続き、リスク対策などを徹底することで、成功への道が開けます。
(*)もう一度チェックしたい箇所があれば、以下をクリックするとジャンプします。
- 中小企業にとってのASEAN市場の魅力とは?
- 中小企業がASEAN進出で得られるメリット3つ
- ASEAN進出を成功するための4つのステップ
- 日本企業がASEANで成功を掴んだ成功事例4つ
- ASEAN市場進出|知っておくべき5つのリスクと解決策
なお、ASEAN進出をより確実なものにするめ、もしサポートが必要な場合は、信頼できるコンサルタントに相談することをおすすめします。
最後、この記事がASEAN進出を目指す皆さまにとって、何かお役に立てたら幸いです。