海外進出に必要な手続きと費用|中小企業向け完全ガイド

電卓とチェックリスト

グローバル化が進む現代、中小企業にとって海外進出は成長と新たな機会を掴むための重要なステップです。

しかし、現地のルールや費用構造を正しく理解しないまま進めると、予期せぬトラブルに直面するリスクが高まります

本ガイドでは、国や地域を特に限定せずに、一般的に必要な手続きと費用について以下の流れで詳しく解説します。

  1. 海外進出の準備|基本的な手続きと費用
  2. 海外進出の準備|事務的手続きの詳細
  3. 海外進出にかかる費用の3つのタイプ
  4. 特に中小企業向け|おすすめの費用削減対策3つ
最後まで読めば、次にとるべき具体的なアクションまでしっかりイメージできるでしょう。

1. 海外進出の準備|基本的な手続きと費用

海外進出を成功させるためには、事前の準備が極めて重要です。

このセクションでは、海外進出する際に必要になる手続きをまとめています。

  • 1-1. 会社設立手続き
  • 1-2. ライセンス・許認可の取得
  • 1-3. 税務登録
  • 1-4. 銀行口座の開設
  • 1-5. 労働許可・ビザの取得

【注意点】
ここで紹介しているのはあくまで”一般的な手続き”なので、国によって一部異なるケースもあります
実際に検討を進める際には、海外進出支援サービスを受けたり、信頼できるコンサルタントに相談することを強くおすすめします。

1-1. 会社設立手続き

会社設立(法人設立)は、海外進出における最も基本の手続きです。

多くの国では、現地で事業を合法的に行うために法人を設立する必要があります。

  • 必要書類の準備
    定款、株主名簿、代表者情報などの基本情報を揃えます。
    これらの書類は、進出先の法規制に基づいて適切に準備する必要があります。
  • 登録申請
    現地の商業登記機関に書類を提出し、正式に法人を設立します。
    申請時には専門家のサポートを受けるとスムーズです。
  • 費用
    国によって異なりますが、一般的には数百ドル〜数千ドルが目安です。
  • 期間
    法人設立に必要な期間は、進出国によって数日〜2ヶ月ほどです。

1-2. ライセンス・許認可の取得

事業を開始するには、業種に応じたライセンスや許認可を取得する必要があります。

特に規制が厳しい分野では、取得プロセスに時間と費用がかかることを理解しておきましょう。

例えば、飲食業・小売業・製造業では以下のような許認可が一般的です。

業界 必要な許認可
飲食業 “食品衛生関連” のライセンスが必要。
小売業 “販売許可” を取得する必要。
製造業 “環境規制” に関連した許認可を求められる可能性あり。

なお、上記のような許認可取得には、一般的に「数百ドル〜数千ドル」が必要となります。

1-3. 税務登録

現地で事業を運営するためには、必ず税務登録を行う必要があります。

これは、法人税や消費税などの税金を適切に納めるために必須です。

ポイント
法人税登録 法人税番号を取得。
消費税登録 VAT/GST(*) など、該当する税制度に基づいて登録。
雇用税の登録 従業員を雇用する場合は、雇用税の登録も必要。
費用
  • 登録自体は無料の場合もあり。
  • もし税理士や専門家を雇うと数百ドルくらいが目安。

(*) VAT/GSTとは?

  • VAT・・・「付加価値税
    (”Value Added Tax”)
    製品やサービスが流通過程で付加される価値に課される税金のこと。
    ・最終消費者が税を負担し、事業者は取引ごとに徴収・申告。
    ・欧州諸国を中心に広く採用されています。
    ・・・・
  • GST・・・「消費税
    (”Goods and Services Tax”)
    商品やサービスの取引に課される消費税のこと。
    ・VATと似た仕組み(主にニュージーランド、豪州、シンガポールなどで使われる名称)
    ・税率は一律であることが多く、シンプルな運用が特徴。

1-4. 銀行口座の開設

法人設立後、現地の銀行で法人専用の口座を開設します。

これは、事業運営における資金管理の基盤となります。

  • 必要書類
    法人登記証明書や代表者の身分証明書が必要です。
  • 手数料
    初期費用や維持費が発生しますが、銀行によって条件が異なるため事前に確認しましょう。

1-5. 労働許可・ビザの取得

現地でのスタッフ雇用や自社社員の駐在には、適切な労働許可やビザを取得することが求められます。

  • ビザの種類
    駐在員向けビザ、就労ビザ、永住権申請などがあります。
  • 費用
    申請にかかる費用は国によって異なりますが、一般的に数百ドルから数千ドルかかります。

これらの手続きを効率よく進めるためには、現地の専門家やコンサルタントの支援を受けることが非常に有効です。

2. 海外進出の準備|事務的手続きの詳細

ここでは、進出後の運営に欠かせない事務的な手続きを具体的に解説します。

これらを正確に行うことで、現地でのビジネス運営がスムーズに進みます。

2-1. 契約書の作成と認証

現地での契約書作成は、ビジネスの基本的な安全性を確保するために重要です。

  • 作成内容
    労働契約や取引契約、リース契約などが含まれます。
  • 認証手続き
    一部の国では、公証人による認証が必要です。
    これにより、契約が合法であることを証明できます。
  • 費用
    契約書の作成には500〜2,000ドル。
    公証費用には数百ドルが目安です。

2-2. 現地法人の税務申告

税務申告は、現地での事業運営を合法的に続けるために必須です。

  • 申告頻度
    四半期ごとまたは年次での申告が一般的です。
  • 必要書類
    財務諸表や収支報告書などを準備します。
  • 費用
    税理士や会計士への依頼費用として年間1,000〜1万ドルが見込まれます。

2-3. 社会保険と労働保険の登録

従業員を雇用する場合、社会保険や労働保険への登録が必要です。

  • 手続き内容
    従業員の登録、保険料の計算と支払いを行います。
  • 費用
    保険料は従業員給与に基づいて計算され、国ごとに異なります。

これらの手続きは、国によって要件が大きく異なるため、進出先の規制に精通した専門家の協力を得ることをおすすめします。

3. 海外進出にかかる費用の3つのタイプ

進出先で必要となる費用を把握することで、予算の適切な配分が可能になります。

ここでは、具体的な費用項目を解説します。

  • 3-1. 初期費用
  • 3-2. 運営費用
  • 3-3. 継続費用

それぞれ順にみていきましょう。

3-1. 初期費用

海外進出の初期に発生する主な費用は、以下の通りです。

費用項目 金額の目安
法人設立費用 数百ドル〜10,000ドル程度
ライセンス取得費用 業種によって異なるが、500〜2,000ドル程度
オフィス・店舗開設費用 賃料、保証金、内装費用で1万ドル以上になるケースもあり。

3-2. 運営費用

プロジェクト運営に関連する主な費用は、以下の通りです。

費用項目 金額の目安
労働力コスト 現地の平均賃金によって大きく異なる。
税金 法人税、消費税、社会保険料など。
広報・マーケティング費用 広告出稿やプロモーションイベントに伴う費用。

3-3. 継続費用

プロジェクト期間中において、継続して発生する主な費用は以下の通りです。

費用項目 金額の目安
銀行手数料 口座維持費や送金手数料など。
法律関連費用 契約書更新やコンプライアンス対応費用など。
税務申告費用 毎年の会計サービス費用など。

4. 特に中小企業向け|おすすめの費用削減対策3つ

海外進出に伴う費用を極力抑えることは、「新事業の早期黒字化」を達成するためにも重要です

ここでは、海外進出にかかるコストを抑えるための具体的な方法を3つ簡単に紹介します。

(※) 費用削減対策については、進出国の公式サイトなどで最新の情報をご自身で確認するか、あるいは、海外進出支援サービスを通じて専門家に相談すること強くおすすめします。

4-1. 政府の助成金利用

多くの国で中小企業向けの助成金制度が用意されています。

こうした助成金制度をうまく使って、費用節約を目指す中小企業は多いです。

例えば、主な例としては以下の通りです。

  • 日本・・・・JETRO
    (”Japan External Trade Organization” / 日本貿易振興機構)
  • アメリカ・・SBA
    (”Small Business Administration” / アメリカ中小企業庁)

4-2. 専門家に依頼した場合の料金を比較する

同一の国であっても、海外進出支援サービスを提供している会社やコンサルタントの規模、専門性、得意な分野などによって料金は大きく異なります

なので、複数の会社やコンサルタントから見積もりをとって比較することをおすすめします。

なお、料金は「1時間あたりいくら」という形で、実際の作業にかかった時間分請求されるケースも多いので、事前にしっかり料金を確認しましょう。

4-3. デジタルツールの活用

費用を抑えるためには、自身でできることは極力自身で行う姿勢が大切です。

例えば、「クラウド会計ソフト」や「プロジェクト管理ツール」を使用することで、費用を抑えることもできます。

ただし、何もかも自社でやろうとすると、コンサルタントに依頼した場合と比べて多大な時間がかかってしまうリスクがあるため注意しましょう

5. まとめ

海外進出は中小企業にとって成長の大きなチャンスであると同時に、多くの課題も伴います。

本ガイドを参考に、手続きや費用について十分な準備を行い、現地でのビジネス成功への道筋をしっかり描くことを意識しましょう!

今回解説した内容を振り返ると、以下の通りです。

もしもう一度チェックしたい箇所があれば、以下をクリックするとその箇所にジャンプします。

  1. 海外進出の準備|基本的な手続きと費用
    • 法人設立手続き
    • ライセンス・許認可の取得
    • 税務登録
    • 銀行口座の開設
    • 労働許可・ビザの取得
  2. 海外進出の準備|事務的手続きの詳細
    • 契約書の作成と認証
    • 現地法人の税務申告
    • 社会保険と労働保険の登録
  3. 海外進出にかかる費用の3つのタイプ
    • 初期費用
    • 運営費用
    • 継続費用
  4. 特に中小企業向け|おすすめの費用削減対策3つ
    • 政府の助成金利用
    • 専門家の活用
    • デジタルツールの活用

最後に、皆さまが海外進出を検討する際の何かお役に立てたら幸いです。

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